2026/03/04
パオラ通信

スタジオマンとして忙しい日々を送っています。
朝が早い日もあれば、夜遅くまで続く日もあります。
刺激的な撮影のスタジオや、有名なカメラマンの撮影にも入っています。
こうやって頑張っていけば、
そのうち自分もカメラマンになれる気がします。
そんな自分にマネージャーのTさんは
「甘ーい」と言います。
あのオッサン、何言っているのかわかりません。
ちょっと嫌なことを言います。
その感覚、
ほとんどのスタジオマンが一度は通ります。
だから安心してください。
あなただけじゃありません。
忙しい。
現場にいる。
プロの仕事を毎日見ている。
すると人は自然にこう思います。
「自分もこの延長線にいる」と。
でも――
その延長線、
途中で消える人がものすごく多い。
これが「甘ーい」の正体です。
スタジオマンの仕事は確実に成長します。
ただし育つのは
撮影を成立させる力。
カメラマンに必要なのは
撮影を生み出す力です。
現場に100回入っても、
自分で決めて撮らなければ経験値は増えません。
現場にいるだけで学べている気になること。
すごい撮影を見続けると、
理解した気になります。
ライティングも分かる気がする。
構図も読める気がする。
でも自分が撮る側になると――
何を決めればいいか分からない。
優先順位が作れない。
空気を作れない。
理由は単純です。
「見る」と「決める」は別の能力だから。
カメラマンは技術者というより、
決断する人です。
そして決断力は、
見学では育ちません。
■今の努力は間違い?
いいえ。むしろ強いスタート地点です。
問題は一つだけ。
スタジオの外で、撮る人として動いているか。
カメラマンになる人は例外なく、
・忙しくても撮る
・頼まれてなくても撮る
・評価されなくても撮る
スタジオマンと「撮る人」を
同時に生きています。
止まる人はこう言います。
「落ち着いたら始めます」
残念ですが、
その“いつか”は来ません。
■たぶんTさんが言いたいこと
たぶん本音はこれです。
「今のままだと、
現場に詳しい人で終わるぞ」
意地悪ではなく、
まだ間に合う時期だから言っている言葉です。
長く現場を見てきた人ほど、
この分岐点を知っています。
■次の一歩
次の休みまでに、1枚でいい。
「自分がカメラマンだったら撮る写真」
を決めて撮ってください。
スマホでも構いません。
そして必ず、
「なぜこの写真なのか」を言葉にする。
たぶん最初は、うまく撮れません。
むしろ「思ったより何もできない」と感じるかもしれません。
でも、それは失敗じゃありません。
はじめて“見る側”から“決める側”に立った証拠です。
多くの人は、この瞬間を避けるために
忙しさの中に居続けます。
その瞬間、あなたはもう
スタジオマンの延長ではなく、
撮る側に立っています。
カメラマンになる人は、
環境が変わった人ではなく、
“立ち位置を自分で変えた人”です。
あなたは、まだ選べます。
スタジオで毎日、カメラマンの撮影を見ていれば、
自分もそれに近づいていると思う気持ちもわかります。
でも、もし、
見ているだけでカメラマンになれるなら――
足しげくドジャーススタジアムに通う
大谷翔平のファンは、
みんな大谷翔平になるはずです。
でも、なれていない。
それは才能や体格以前に、
そもそもの立ち位置が違うからにほかなりません。
野球も撮影も、
見るのは楽しい。
語るのも楽しい。
だから、カメラマンウォッチャーでも全然オーケー。
ただ――
そこに居とどまる限り、
カメラマンはいつも
フェンスの向こう側の存在です。
【毎週水曜日更新】